今年もあなたに幸運を

「……あけましておめでとうございました」
「どうした。やけに不機嫌だな。大体何で過去形なんだ」
「だってもう元日終わっちゃいます!ていうか聞いてくださいよ室井さん!俺、定時になって帰ろうと思ったら通報ばっかりで、五件目の通報で被疑者ともみ合いになって気付いたら年明けちゃったんです。しかもしかも署に戻ったらお節なくなってたんですよ!」
「恩田くんか」
「すみれさんです。それで、やっと帰れるーって思ったら、金がないからって男が強盗に来て……」
「……強盗?湾岸署に?」
「はい」
「相変わらず街中よりも事件が起こるんだな」
「それで和久さんが確保したら、新年早々腰を痛めちゃって。真下が正月デートに雪乃さんを誘ったら一瞬でふられて泣き出して、課長は娘さんがまた何かの受験だかで署に寝泊まりしてるから始末書仕上げろってうるさいし。係長は久しぶりにアンジェラさんから電話が来たのにすぐに事件が起きちゃって沈みまくって使い物にならなくて代わりに俺が通報に出なきゃならなかったんですよ。もう寝る暇も食べる暇も室井さんに電話する暇もないしっ!」
「……それは、散々だな」
「でしょ!?本当、俺今年ツイてないかもー」
「まだ元旦だぞ。気が早いだろ」
「一年の計は元旦にあり、ですから」
「なるほどな。――でも俺は今年はついてそうだ」
「何でですか?ていうか俺を差し置いて自分だけ幸せにならないでくださいよ!」
「いや……。俺は新年早々、お前に会えたから」
「は?」
「去年は全然会えなかっただろ。俺も特捜抱えてて、お前も仕事で」
「それは、そうですけど」
「一年の計は元旦にあり、が本当なら、今年はお前との運がありそうだ。――お前は違うのか」
「……違いません。でも」
「でも?」
「秘め始め、できたらもっとツイてるかも」
「明日も仕事で忙しいんじゃないか」
「そーいうの、愚問っていうんですよ」
「そうか。……青島、あけましておめでとう」
「今年もよろしくですねー」


***
にぎやか湾岸署。