しあわせな家族のかたち
真下くんと雪乃さんの子供(3歳・男の子)を預かる青島くん。名前は正雪くんにしよう。
そこに室井さんがやってきました。ちなみに室井さんは広島から帰ったばかりなので、正雪くんとの面識はありません、という設定。
「あおしま、このひとだれ」
「このひとはねー、お前のパパより偉いひとだよ」
「じゃーママよりも!?」
「(やっぱり真下よりも雪乃さんのほうが偉いんだ……さすが雪乃さん)うん。一応ね」
「ふぅん。あおしまは?あおしまはこのおじさんよりえらいの?」
「……おじさん?」
「おにーさんではないでしょ室井さん。俺よりも全然偉いよ」
「だからこわいかおなの?」
「そうなんですか?室井さん」
「俺に聞くな俺に。それよりその子供はどうしたんだ」
「俺の子です」
「は?」
「だから俺のコドモ」
「ちがうよ。あおしま、うそつきー。どろぼーのはじまりだよ」
「嘘なのか」
「ジョークに決まってるじゃないっすか。つーか室井さん、俺と誰の子だと思ったんすか」
「……別に信じたわけじゃない」
「あおしま、ごめんなさいしなきゃ。うそついたから」
「……はい。すいません。……さすが雪乃さんの子だ」
「柏木君の?」
「はい。この子、真下と雪乃さんの息子で正雪くんっていうんです。でも今日ふたりきりでデートらしいから俺が預かってるんすよ。なー?」
「うん!あおしまのとこいけってママが」
「なるほど。確かに顔立ちは柏木君に似てるな」
「性格も結構雪乃さん似だけどなぁ。ちなみに正雪は、正義の『正』に雪乃の『雪』。真下が命名したんですよ」
「めいめい?」
「お前の名前はパパがくれたってことだよ。でも室井さん、本当にすいません。わざわざ来てもらったのに……」
「いや、俺も今日非番になったのは偶然だ。真下君たちの予定のほうが早かったんだろ?」
「まあ……今日のデート、すんごい久しぶりだからって俺押し切られちゃって。パパ、はりきってたろ?」
「うん。パパがね、ママにいっぱいたのんでたよ。あ、『どげざ』してた」
「……土下座?」
「真下、やっぱり尻にしかれてるんですね」
「あおしま、それどういういみ?」
「なんでもないよ。よくそんな言葉知ってるなあ。偉いぞ!」
「ほんとに!?このおじさんよりも?」
「おじさん……か」
「室井さん、そんな遠い目しないでくださいよ。――正雪、おじさんって呼ぶと怖い顔するから室井さんって呼ぼうな」
「むろいさん?」
「うん。室井さん。このひとの名前だよ。室井さんも正雪って呼んであげてくださいね」
「わかった。……正雪」
「むろいさん!」
「……」
「どうした?青島」
「……かわいい」
「は?」
「なんかかわいい!室井さんと正雪。めちゃめちゃかわいいっ」
「むろいさんとぼく?」
「可愛いって……。ところでこのあとの予定は?」
「公園で遊びます」
「むろいさんもあそぼう?あおしまもおねがいしてよ」
「ん、わかった。ね、室井さん、遊ぼう?」
「わかった。わかったから上目遣いで見つめてくるな。俺がそれに弱いって知っててやってるだろ」
「よっしゃ。正雪、室井さん遊んでくれるって」
「やった!」
(公園に行った帰り、三人で手を繋いで青島くん家に帰ればいいです。ちなみにこれを新城さんあたりが目撃して、『室井さんどうやって青島の子供を!?』とか勘違いしてほしい。もしくはあれが真下の子だって知ってるけど、家族みたいに見えてデレデレしてる室井さんを見て気味悪がればいい)
「すいません。なんか正雪、室井さんにすごい懐いちゃいましたね。全然離れないし」
「お前にも懐いてるだろ?」
「いや、こいつ結構人見知りするんですよね。俺も結構こうなるまで時間かかったから、雪乃さんが見たらびっくりすると思いますよ」
「青島」
「はい?」
「妬いたのか?」
「…………なんで子供相手に俺が妬かなきゃいけないんですか」
「そうか。俺は妬いたけどな」
「え!?嘘っ」
「嘘つきは泥棒の始まりだ」
「……そうですね」
「久しぶりに非番が合ったのに子供がいて、しかもお前にべったりで俺は……」
「ああもういいです。すいません嘘つきました。妬きましたよどうせ。正雪すぐ室井さんに懐くしさぁ」
「そうか。よかった」
「てか室井さん、たまたま非番になったって」
「昨日の夜、今日か明日か、どちらか非番を交換してほしいと言われた。だから今日にしたんだ。お前から前に休みだと聞いてたから」
「確かにそうだけど。それたまたまって言いますかね。俺的にはラッキーなんですけどね」
「そうか。それならよかった」
「ていうか室井さんって、意外と子供好きなんですね」
「妹の面倒を見ていたからな。嫌いじゃない。それに、彼女に比べれば正雪は躾が行き届いている」
「……なんか室井さん、いいお父さんになりそうですね」
「え?」」
「いつもより笑顔倍増でしたもん」
「……なあ、青島」
「なんすか?」
「俺は子供は好きだが自分の子供はいらない」
「え?……なんですか唐突に」
「何となく言いたくなった。たとえ俺の血を半分引いてたって、俺は青島との子供じゃないかぎり、いらない。――だから、俺はお前の言う、『いい父親』にはなれそうもないな」
「……」
「青島?」
「…………俺の子供って、室井さん、時々爆弾発言しますよね」
「別にいいだろ。本当のことなんだから」
「なにそれ。すげー開き直りすぎですよ」
「悪いか?」
「悪くないですね。感動して、涙でそう」
「……青島」
「ね、室井さん」
「ん?」
「俺と、コドモできちゃうようなコトしません?」
おまけ。
正雪くんは今日の出来事をパパとママに話しました。
「……相変わらずすごいな、室井さんとセンパイ」
「でも室井さん、意外に優しいのね。正雪、楽しかった?」
「うん!あ、あのね、むろいさんはあおしまの、えっと……あ、うわめづかい?によわいんだって」
「上目遣い?……どんな会話してるんだろう、あのひとたち」
「それと、あおしまがね、どげざしっててえらいなーってほめてくれた」
「土下座?正雪、それどこで知ったの?」
「いつもパパがママにしてるもん!」
「…………あ、雪乃さん!今日の夕食は僕がやりますから。ね?」
***
やばいすごく楽しかった……これ。子供ネタ好きです。
ちなみに正雪くんが今度ふたりに会ったとき、「パパもママもおしえてくれないけど、ぼくってどうやってうまれたの?」と聞けばいい。